平成10年度第1学期試験 (科目  現代人のこころ文学部 )  (担当  松尾太加志 )  持込可 60分

T. 知覚に関する説明として,次の文が正しければ「○」を解答欄に書きなさい。間違っていれば,内容の誤りを修正し,説明として正しい文にしなさい。ただし,文末を肯定形や否定形に直したり,文を一部削除しただけではだめである。
  1. 物の大きさの知覚は,網膜に投影する像の大きさだけから判断している。
  2. 奥行き反転図形の反転する2つの図形は,幾何学的に類似した図形であるため,一方だけが見えやすいということはない。
  3. 不可能図形は,2次元的に解釈すれば,不可能でなくなる。
  4. 私たちの見ている世界は,特別のことがない限り,誰でも,同じ物理的世界を見ているはずである。
  5. 聴覚では,音声を単なる音として聞いてはいないので,意味のない文章よりも意味のある文章のほうが聞き取りやすい。
U. 下記の文章中,下線部にもっとも関係があると思われる心理学の用語を書きなさい。


 自動車学校に通い始めた頃,ほんとうに自分で運転できるのか不安であったが,少しずつ段階を踏んだやり方1)で教えてもらったので,なんとか実技は合格した。ただ,学科のほうが苦手で,とりあえず,この問題のときはこの答えというのを丸暗記した。おかげで,学科試験は,99%とれたが,問題と解答をただ結び付けて覚えているだけで,これでは理解していることにはなってない2)と思う。答えを口に出して何度も繰り返すというやり方3)で覚えたが,ただ繰り返すだけではなく,何かと関係づけたほうがいいようである。繰り返し数よりも,関わりの程度4)が影響するようである。
 車の運転は,慣れないうちは,ひとつひとつの操作を頭の中で意識しながらやっており,こういう場合はこの操作をしなければならないという知識5)が利用されているようである。運転に慣れてくると,スムーズに運転ができ,このときは,最初の頃とは違う知識6)が使われている。それが,どのような知識であるかは言葉ではなかなか表現できない。
 下手だった縦列駐車も,最初は試行錯誤で,うまくいったりいかなかったりする。そのうち,うまくいったときのことだけを覚えて,学習7)していく。ただ,自分でやってみなくても,上手な人の運転を見ていると,こうやればいいんだなということが学習8)できる。また,細い路地なんかを運転するとき,ここで,この程度ハンドルをきればいいはずだと,頭で考えたことがその通りうまくいった9)ときの喜びは大きい。
 先日,母の友人宅まで母を車で送っていったが,なかなか道がわからない。母は何度も行っているから,どこでどう曲がればいいか自分ではわかっているけど,いいタイミングで道案内をしてくれない。もともと,その界隈に関する認知的枠組み10)を持っていない僕にはわかりにくいのである。
 あるとき,黄色い服を着ている人を轢きそうになり,ひやっとしてしまったことがある。そうすると,黄色い服を着た人を見ただけでひやっとするようになった11)。将来,人間が運転せずに,ロボットが運転してくれたら,そんなこともなくなるだろう。しかし,車を運転するロボットを開発しようとしても,運転に必要な情報とそうでない情報を区別させることが難しい12)だろう。

V. 1学期の講義の中で,最も印象に残った内容について,あなた自身の意見や感想を書きなさい。