行動の科学

担当している授業のシラバス等の情報を掲載しています

シラバス

担当者名 松尾太加志
単位 2単位
学期 1学期
授業形態 講義
クラス i-Designコミュニティカレッジ

授業の概要
 心理学は行動の科学とも呼ばれています。人のこころを理解するには,人の行動を観察することが欠かせないからです。人の行動のどのような側面を観察すれば,人のこころが見えてくるのでしょうか。観察の方法には,文字通りの行動観察だけでなく,調査や実験が含まれます。仕事や日常生活場面での自らの行動やコミュニケーションを改めて振り返ったりすることで,人の行動の背景にある人間の心理について深く理解していきます。

教科書
 テキストは使用しない。

参考書(図書館蔵書には○)
サトウタツヤ・渡邊芳之(2021)心理学・入門−心理学はこんなに面白い 改訂版 有斐閣
〇行場次朗・箱田裕司(編著)(2020)新・知性と感性の心理−認知心理学最前線 福村出版
〇松尾太加志(編著)(2018)認知と思考の心理学 サイエンス社
〇鈴木宏昭(2020)認知バイアス 心に潜むふしぎな働き 講談社
〇櫻井芳雄(2023) まちがえる脳 岩波書店
〇松尾太加志(1999)コミュニケーションの心理学−認知心理学・社会心理学・認知工学からのアプローチ ナカニシヤ出版

授業計画・内容
第1回 ガイダンス:行動の科学としての心理学
心理学はこころの科学であるが、同時に行動の科学とも言われる。心理学はなぜ行動の科学と言われるのか、そして心理学はどのような学問なのかを、その歴史や研究分野について説明する。
第2回 心理学では「こころ」をどう調べるのか
サイエンスである心理学では科学的な手法によって「こころ」を調べている。その手法には、実験、調査、観察など、いくつかの方法がある。心理学は科学的に「こころ」を解明するためにどのような研究手法がとられているのか説明する。
第3回 知覚された世界と物理的世界の違い
知覚は「こころ」の入口だとも言われる。私たちが見たり聞いたりしている事柄が「こころ」に影響を与える。一方で、私たちが見たり聞いたりしている心理的世界は、「こころ」の影響を受けている。人間は外界の物理的世界をどのように知覚しているのか説明する。
第4回 記憶と知識
私たちの記憶はどのようなメカニズムとなっているのか、そして知識はどのように蓄えられているのか説明する。
第5回 学習理論
仕事でも日常生活でも人は様々なことを学び、いろいろな行動を学習し成長している。学習はどのようなメカニズムで生じるのか説明する。
第6回 何が行動に影響を与えるのか
人間がある行動を行うのは動機づけによって説明できる。一方、学習の理論を応用すれば、人間の行動を望ましい方向に変容させることができる。人は何に影響され行動をするのかについて説明する。
第7回 合理的ではない判断をしてしまう
人間はいつも合理的な判断をしているわけではない。従来、経済学では経済活動における人間の意思決定が合理的になされるものだとされていた。しかし、そうではないことが行動経済学では明らかにされてきた。人間の意思決定に影響を与える心理について説明する。
第8回 情報伝達というコミュニケーション
コミュニケーションにおいて、人間は伝達された内容だけで相手の意図を理解しているわけではない。情報を伝達する場合、人はどのように行っているのか、そのプロセスについて説明する。とくにメンタルモデルの役割について説明する。
第9回 わかりやすく情報伝達を行うには
相手にうまく伝わるように情報伝達を行うには、送り手が考えているメンタルモデルと同じメンタルモデルを受け手にも構築させることである。そのためにどのようにすべきかを考えてみたい。
第10回 機器とのコミュニケーション
私たちが機器を利用する場面は、機器とコミュニケーションをしている。機器がわかりやすく作られているのかどうかは、人間の行動特性に合わせて機器が作られてなければならない。
第11回 対人認知と社会認知
私たちが他者をどう認識しているのか、そして、個々の集まりである社会に対してどのような認識しているのか、様々な社会心理学の知見から説明をする。
第12回 周囲に影響されやすい人間
私たちの意思決定や行動は、他者の影響を受けてしまう。社会的影響について社会心理学の知見から説明する。
第13回 AIの進展によって何がかわるのか
人工知能の進展は、知能とは何か、人間とは何かを考えさせるきっかけともなっており、哲学的・心理学的問題でもある。さらに人工知能技術を応用したデータサイエンスも心理学と無縁ではない。AIの進展についていっしょに考えてみたい。
第14回 ヒューマンエラーの防止
人間は誰でも間違いをする。そのヒューマンエラーが重大な事故を起こしてしまうこともある。ヒューマンエラーは現代のように制度やシステムが複雑化した中では完全になくすことができない。ヒューマンエラーを心理学的にどのように捉えればよいのか、そしてヒューマンエラーの防止ではどのように考えればよいのか説明をする。
第15回 まとめと2学期のガイダンス
これまでの講義で説明できなかったところを補足するとともに、2学期の「心理学研究」の授業についての説明をする

成績評価の方法
 50% 授業の参加状況(講義に対するコメント)
 50% レポート

事前・事後学習の内容
 自分で興味ある心理学の分野の本を読んだり、授業で紹介した文献、ウエブサイトなどで学習をしてください。

履修上の注意

担当者からの メッセージ
 心理学は「行動」を対象とした実証学問です。人の行動がどのようになっているのかの知見がどのような実験や調査などで明らかになっているのかという視点でとらえることが大切です。

キーワード
 心理学、実験、観察、調査、知覚、記憶、知識、学習、動機づけ、認知バイアス、コミュニケーション、社会的認知、ヒューマンエラー、人工知能

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