推薦図書

私が読んだ本の中から推薦できる図書を紹介しています

ヒューマンインタフェース


  • ノーマン,D.A. 2011 複雑さと共に暮らす〜デザインの挑戦 新曜社 2,940円
     便利になると複雑になってきます.ただし,複雑であることがいけないわけではなく,わかりやすくできればいいわけです.それがデザインの課題だとノーマンは述べています.
     本書で注目されているのは,シグニファイアという概念を提唱している点でしょう.従来,アフォーダンスという言葉で説明されていましたが,アフォーダンスを持たせても,それに利用者が気づかないと意味がありません.シグニファイアという言葉の意味がわかりにくいのですが,どのような行動をとるべきかを示すことができるシグナルと考えればよいでしょう.
     個人的に面白かったのは「待つことのデザイン」です.どうすればストレスなく待ってもらえるかを心理学的にアプローチしています.待つことは複雑なことではないでしょうが,ストレスフルなことです.何が生じているかがわかって,自分の番が確実に近づいているということがわかればいいのです.これは機器の利用場面とも共通していると思われます.パソコンなどで時間がかかる処理に遭遇し,フリーズしてしまったのではないかと思うことがあります.何が起こっているのかわからないという認知不安を生んでしまいます.でも,何が生じているために遅くなっているのか,そして,進行状況ダイアログで時間経過を教えてもらえると安心できるのです.

  • スティーブ・クルーグ 2001 ウェブユーザビリティの法則−ストレスを感じさせないナビゲーションの作法とは− ソフトバンクパブリッシング 2,600円
     原題は,“Don't Make Me Think!”です。ホームページを閲覧したときは,どこをクリックすればいいのかわからないといった経験はありませんか? 使いにくいページによく出会うことがあります。どうしたらいいのか利用者を悩ます,そんなページはもう勘弁です。それが原題に込められています。「私に考えさせないで!」。
     どうすればわかりやすいホームページを作れるのかがこの本の課題です。企業のページを基本に書いてありますが,一般のホームページを作るときにも非常に参考になりますし,マニュアルなどのドキュメントの作成にも参考になります(こんな本を読むと,耳が痛いです。私のこのホームページも,使いにくいですよね)。
     さらに,使いやすさを検討する上でとても重要になるユーザビリティのテストのやり方について,実に詳細に書かれています。テスト場面では,具体的に被験者に対してどのようなことを言えばいいのかまで書いてあります。ユーザビリティの考え方を学ぶ上での一般の入門書としても最適な本です。ぜひ読んでみてください。

  • 海保博之 2002 くたばれ、マニュアル!−書き手の錯覚、読み手の癇癪− 新曜社 1,800円
     「くたばれ」とありますが、むしろ、マニュアルに対する「応援歌」です。こんなまずい例があるけれど、こんな風に書けばわかりやすくなるということを認知心理学的立場から解説されています。この本を読むと、マニュアルだけではなく、わかりやすい文章を書くにはどうすればいいのかということがよくわかります。具体例も面白く、「そう、そう、その通り」と思わずうなづきたくなります。
     わかりやすく書くにはどうすればいいかの本ですから、当然、この本もわかりやすくするようにいろんな工夫がされています。そして心理学の勉強にもなるのですから、読まない手はないでしょう。

  • D.A.ノーマン 2000 パソコンを隠せ,アナログ発想でいこう 新曜社 3,300円
     原題は,“The Invisible Computer”。邦訳のタイトルを見たとき,最初はなんかヘンテコリンな題をつけたなと思いました。でも,本書を読んでみるとなるほどと思えます。
     パソコンは,今や情報処理マシンとして,いろいろなことができるようになってきました。反面,パソコンを使う上で覚えるべきことが増えてしまいました。私たちが使いたいのは「パソコン」ではなく,そのパソコンが実現してくれるワープロだのメールだの表計算といった機能なのです。でも,パソコンという機械の上で動くため,パソコンのことを覚えないといけなくなってしまいました。でも,それぞれの機能に特化した情報機器が出現してくれば,実際には「パソコン」で動いていても,利用者は「パソコン」のことを覚える必要がありません。このような特化した情報機器を「情報アプライアンス」とよんでいます。この発想が「パソコンを隠せ(invisible computer)」です。ゲーム専用機などは,すでにコンピュータは中に組み込まれていて,コンピュータのことを意識せずに利用できるようになっています。今後そうなるべきだとノーマンは主張しているのです。
     私たちがこのように「パソコン」に翻弄されるようになってしまったのは,まだ,コンピュータが技術を誇示したマシンであるからです。今や,コンピュータは誰もが使う家電製品です。使いやすさはだいぶ改善されたものの,まだまだ,速さや容量といった性能を競っています。でも,使う側は,そのようなことを求めているわけではありません。デジタルな測度で推し量れる性能を追求するのではなく,人間はもっとアナログ的な発想でものごとを処理しているのですから,そのような人間を中心とした設計をやっていく必要があるのです。それが「アナログ発想で」というタイトルに表れています。ノーマンは,そのためには,メーカーの組織や文化を変えていかなければならないと主張しています。このような話は心理学というよりも社会学や人類学なのかもしれません。
     ノーマンは,著名な認知心理学者であり,その後アップル社にも勤務したことがありました。そのため,メーカーの事情もそしてユーザーの行動も十分に知り尽くしている人です。ノーマンだからこそ著せた本でしょう。一読をお薦めします。

  • もりすぐる 1999 バリアフリー入門 緑風出版 1,600円
     Q&A形式になっており,バリアフリーについてわかりやすく説明されています。写真や図解が豊富なので,読んでいて「なるほど」と思わせるものばかりです。さらに,「バリアフルな街角」という囲み記事では,具体的にバリアのあるモノが,実際の体験談として紹介されています。
     バリアフリーの問題は,高齢者,障害者,乳幼児連れの人たちだけの問題ではありません。初めて利用する人,初心者にはわかりづらいものが世の中には氾濫しています。この問題を福祉だけの問題としてとどめておくのではなく,「使いやすさ」全般の問題だと捉えていくべきだと思います。

  • ニールセン 1999 ユーザビリティエンジニアリング原論 トッパン 3,500円
     「ユーザビリティ」とは,「使いやすさ」ということができるでしょうか。「エンジニアリング」とありますので「工学」ですが,内容は心理学的なアプローチです。機器(主にコンピュータ)を設計する場合のインタフェースの心理学の本ととらえていいでしょう。この分野でこれほどまとまった本は国内では出版されていませんでした。
     拙著「コミュニケーションの心理学」でも多くの部分を引用しています。原著の訳語をどうするか苦労したのですが,翻訳が先に出ていれば,そんな苦労をしなくても済んだのにと思っています。拙著と合わせて読んでいただければ,幸いです。
     訳本ですが,わかりやすい訳であり,「ですます」体で書かれてさらに読みやすくなっています。巻末には,練習問題,豊富な文献集があり,より勉強を深めていこうとするにも好適の本です。まさに,「原論(邦訳)」にふさわしい書籍です。少し高いですが,一読をお薦めします。
     現在は、東京電機大学出版会から第二版として出版されています。

  • D.A.ノーマン 1990 誰のためのデザイン? 新曜社 3,399円
     原題は“The Psychology of Everyday Things”で,POETと略されています。邦訳のタイトルはうまくつけてあると思います。機械は,本来利用する人のために設計すべきなのですが,利用する人のことは何も考えておらず,使いくい機械になってしまっています。私が,ヒューマンインタフェースを研究しようというきっかけになった本です。学術的でありながら,一般の人にも読めるようになっている本です。ぜひ読んでみてください。

  • 佐伯胖 新・コンピュータと教育 岩波新書


  • Landauer 1997 そのコンピュータシステムが使えない理由 アスキー出版 3,150円
     授業で輪読をしたことのある本です。訳本で読みにくいところがありますが、内容はとても面白いです。コンピュータシステムを導入すると便利になるどころか、かえってうまくいかない話がたくさん出てきます。ただ、一方的にコンピュータシステムを批判するのではなく、ユーザビリティについての取り組みの必要性を説いています。
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