推薦図書
私が読んだ本の中から推薦できる図書を紹介しています
メディアコミュニケーション
いろいろな視点からケータイについて論じられています.執筆者のほとんどが社会学者であり,心理学を専門とする私からすると新鮮な内容でした.ケータイについて,これほどいろいろな観点から捉えることができるものだと感心いたしました.12章から構成されていて各章がコンパクトで非常に読みやすい本です.
デジタルなデザインというと,つい箱の中に閉じ込められたものを想像してしまいます。これまでの考え方はソフトウェアとハードウェアを独立して考えるように,情報を人間の身体や環境世界と切り離して,情報だけを独立して考えていました。しかし,そうではなく,人間と情報,あるいは,環境世界と情報というのは,一体化して切り離されないものなのです。
この本を読むと,これまでにはできなかった新しい情報の提供のしかたがあるのだということを教えられました。もっとも,その中にはまだ試みに過ぎないものもありますが,これからの新しい情報のデザインのあり方を考えさせる本でした。
副題「Eメールの心理学」のほうがピッタリする内容でした。メールでどのような人間関係を持とうと人は期待しているのか,そのためどのようにすれば,うまくメールでコミュニケーションを行うことができるのかといったことがよくわかります。大衆向けの本とは違い,心理学的な視点がきちんとしています。さらに,メール・カウンセリングの可能性も,実践された筆者ならではの考察で,とても興味深かった内容です。
テレビゲームは,遊び相手をしてくれる存在としての役割を満たしてくれます。そのテレビゲームは,しだいに進化し,ペット型ロボットに代表されるように,仮想的な世界の中での遊びだけではなくなってしまいました。ほんとうに「ヴァーチャルな(実質的な)」世界を提供してくれる存在となってきています。そのようなテレビゲーム文化の推移がこの本を読むとよくわかります。メディアがよりインタラクティブになっていく方向性がよくわかってきます。
インターネットというメディアが社会に普及をはじめて,まだ日は浅く,他のメディアに比べるとその利用法も確立しているとはいえません。無限の可能性を持っているようでもあり,様々な問題点を孕んでいます。ただ,インターネットが他のメディアと違うのは,単なるひとつのコミュニケーションツールが出現したということ以上に大きな影響力を持っていることです。
本書では,応用的な側面から,教育,臨床,組織におけるインターネットの利用について心理学的に考察をしてあります。そして,最後には影の部分として問題点について論じています。この分野の研究は,まだ多くはありませんが,最新の文献に基き論が展開されており,この分野の勉強をはじめようという人には最適の本です。巻末にはインターネットの用語の解説も載っています。13章からなっていますが,各章は独立しているため,個々に読むこともできます。
拙著「コミュニケーションの心理学」とあわせて読んでもらうと,もっと理解が深まると思います。
最近コンピュータが普及し,コンピュータネットワークを利用している人が多くなっています。そのため,メディアでも多くの話題が取上げられ,個人でも一家言を持っている人もいます。しかし,それらの中には,経験的な俗論であったり,極端な肯定論や否定論になっていることも少なくありません。本書では,著書自身が俗論になっているのではないかと謙遜しておられますが,その分析的な見方には,他書には見られないアカデミックさが強く感じられます。過去の文献の論点を十分に吟味しながら,著書自身の論が展開されています。それは,豊富な参考文献リストが物語っています。それでいながら,一般の人にも読めるようにわかりやすく書かれています。
コンピュータネットワークを利用したことがない人にとってはピンとこないかもしれませんが,コンピュータネットワークについての優れた考察の好著です。ぜひ,お薦めします。